意見書等


技能実習法に対する声明 <2017年1月27日>

技能実習法に対する声明(PDF157kb)

2017年1月27日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三 殿
法 務 大臣 金 田 勝 年 殿
外 務 大臣 岸 田 文 雄 殿
厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿
経済産業大臣 世 耕 弘 成 殿
国土交通大臣 石 井 啓 一 殿

〒169-0075 東京都新宿区高田馬場4丁目28番19号
          きりしまビル4階 暁法律事務所
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ファックス  03-6427-5903
外国人技能実習生問題弁護士連絡会
共同代表 弁護士 指 宿 昭 一
共同代表 弁護士 小野寺 信 勝
共同代表 弁護士 大 坂 恭 子
事務局長 弁護士 髙 井 信 也

技能実習法に対する声明


1 政府が、2015年3月6日に国会に提出した「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」(以下「技能実習法案」という)が、2016年11月18日成立した(以下「技能実習法」ないし単に「本法」という。)。
2 当連絡会は、既に技能実習法案提出時の2015年8月28日付意見書で述べた通り、技能実習制度は廃止すべきと考えており、技能実習制度を存続、拡大させることを前提とする技能実習法の成立を評価することはできない。

 技能実習制度では、途上国への技術移転を通じて国際貢献を図るという制度目的と、安価な労働力確保のために用いられているという実態とが全く乖離している。そして、技能実習制度には、送出し機関や監理団体による中間搾取や、実習実施機関が固定されており技能実習生に転職の自由がない等の構造的問題があり、これが対等な労使関係の構築を困難にして技能実習生に対する人権侵害を引き起こしている。
 技能実習法は、安価な労働力の受入れ制度との実態を直視せずに「国際協力の推進」(1条)を目的に掲げており、上記の構造的問題を残存させるものであるから、法案の成立によって、技能実習生に対する人権侵害が止むとは考えられない。

3 もちろん技能実習法には制度の適正化のための規定も盛り込まれている。また、同法案の成立にあたってなされた附帯決議においても、特に参議院の決議においては、制度の適正化のために様々な条件が付されている。

 それでも、本法案の適正化策は、上記構造的問題を解消するほどに十分なものであるとは考えられない。
 例えば、政府(当局)間取決めについては、国会審議において、取決めを受入れの要件とはしないうえ、相手国に法的拘束力も持たせないものであることが明らかになっており、送出し機関による中間搾取の問題を解消することは全く期待できない。
 また、実習実施機関の変更についても、国会審議において、「やむを得ない事情」がある場合に、まずは監理団体が傘下の実習実施機関内での転籍に努め、外国人技能実習機構は新たな実習先を確保するための連絡調整等の支援を実施するとされている。
 しかし、実習実施機関に問題がある場合に、技能実習生の転籍を監理団体に任せるだけでは、実習先を移動する自由がほとんど担保されないことは、我々が数多く経験するところであり、不十分であることは明らかである。外国人技能実習機構の支援も単なる「連絡調整」に留まるのであれば、結局、「やむを得ない事情」があっても、技能実習生は元の実習先での権利侵害を受忍し続けるか、実習実施機関を離れて「不法就労」するかの、酷な選択を迫られる現状に変わりはない。
 さらに、技能実習生の意思に反する強制帰国に対して本法が明文で罰則規定を設けなかったことは、技能実習生の保護に欠けると言わざるを得ない。

4 また、このような不十分な規制のまま、制度の拡大策を同時に推し進めることも、本法の大きな問題点である。技能実習制度下の人権侵害状況に鑑みれば、制度の拡大は、制度の適正化が実現された後にはじめて実施されるべきである。

5 最後に、技能実習法の成立と関わらず、技能実習制度は廃止すべきである。
 非熟練労働者の受入れについては、非熟練労働者受入れを目的とすることを正面から認め、労働者に対する人権侵害を生じさせる構造的問題を克服した、すなわち、少なくとも中間搾取のおそれが無く、転職の自由が保障された新たな労働者受入れ制度を構築すべきである。

 以上

技能実習制度適正化実施法案に対する意見書 <2015年8月28日>

技能実習制度適正化実施法案に対する意見書(PDF185kb)

2015年8月28日
内閣総理大臣  安 倍 晋 三 殿
法務大臣  上 川 陽 子 殿
外務大臣  岸 田 文 雄 殿
厚生労働大臣  塩 崎 恭 久 殿
経済産業大臣  宮 沢 洋 一 殿
国土交通大臣  太 田 昭 宏 殿

外国人技能実習生問題弁護士連絡会
共同代表 指 宿 昭 一
共同代表 小野寺 信 勝
共同代表 大 坂 恭 子
事務局長 高 井 信 也

技能実習制度適正化実施法案に対する意見書

第1 はじめに

 政府は、2015年3月6日、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」(以下「技能実習適正化法案」ないし単に「本法案」という)を閣議決定し、国会に提出した。
 本法案は、暴力、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段による技能実習の強制、技能実習不履行に関する違約金等の予定の禁止等明記して罰則を科す等の制度「適正化」措置を盛り込む一方で、技能実習3号を創設し現行制度では合計3年を上限とされているところを更に2年延長するなど、制度「拡充」措置をも合わせて定めている。
 当連絡会は、技能実習制度が途上国への技術移転を通じて国際貢献を図るための制度でありながら、現実には安価な労働力確保のために用いられているという制度目的と実態の乖離や技能実習生に実習実施機関を自発的に選択することも許されず対等な労使関係が構築できないなどの構造的問題が人権侵害を引き起こしていることから、技能実習制度は廃止すべきであり、非熟練労働者の受入れについては、労働者に対する人権侵害を生じさせる構造的問題を克服した、非熟練労働者受入れを目的とすることを正面から認めた新たな労働者受入れ制度を構築すべきであると考えている。
 ところが、技能実習適正化法案は、技能実習制度を存続、拡大させることを前提とするものであり、技能実習生の人権侵害を解消するものではないから、当連絡会が本法案を積極的に受け入れる余地はない。
 特に、本法案が技能実習期間の延長等の制度を「拡充」する規定を設けたことについては、到底受け入れられるものではない。また、本法案では監督の強化策や人権侵害等の予防や技能実習生保護といった制度「適正化」のための規定も規定されているが、その内容も不十分と言わざるをえない。
 とはいえ、技能実習生制度が当面の間存続する以上、少なくとも以下に具体的に指摘するような本法案の問題点を解消し、技能実習生の保護をより実効化するよう求める。

 

第2 外国人技能実習制度の「拡充」の問題点

1 技能実習3号を創設すべきでない
 技能実習適正化法案は,既存の制度(技能実習1号及び同2号の合計3年)に加え,技能実習3号(2年)を新設し,優良な実習実施者及び監理団体に限定して3号への移行を認め,合計5年間の実習を可能とする(法案2条、9条)。
 しかしながら,技能実習制度は,転職の自由がないことや、制度利用のための母国での借金、送出し機関やブローカーとの間の違約金規定や保証金の存在などから,自ら救済を求めることができない構造になっており,国際社会から人身取引にあたるとの批判を受けているところである。
 しかるに、転職の自由が原則として認められず,二国間協定も取り決められないという,制度の抜本的な問題の解決は図られていない状況において実習期間のみを延長すれば,人権侵害が長期に渡って継続することになり,到底許容できるものではない。
 したがって、技能実習3号を創設して、技能実習期間を延長すべきではない。
 
2 技能実習生の受入人数枠を増加すべきではない
 有識者懇談会の報告書によると,法律事項ではないが,技能実習生の受入人数枠について,緩和が提言されている。現在,省令によって,一社の受入人数枠が,原則として常勤職員の20分の1に制限され、特例枠として,従業員が50人以下の場合は外国人実習生3人まで,51人~100人の場合は6人,101人~200人の場合は10人等と定められているところ,これを,常勤職員の10分の1と現行の2倍の受け入れを認め,特例枠として従業員が30人以下の場合は3人まで,31人~40人の場合は4人,41人~50人の場合は5人の受入れを提案している。
 安全教育の不備などによる技能実習生の労働災害も散見されており,受け入れ態勢が万全であるとは到底言えない現状において,受入人数枠の拡大は到底許されるものではない。
 また,技能実習制度が,技能の習得を目的とするものであると強弁するのであれば,より細やかな教育や実習を実施すべきであって,受入人数枠を拡大する理由はない。
 
3 職種を安易に拡大すべきではない
 技能実習の対象職種は法律事項とされてはいないが、政府において、現行の71職種130作業について、介護職種の追加等の拡大が検討されている。
 しかしながら、技能実習を受け入れる職種として適正があるかどうかは,実習生らの母国における活用可能性や,職務上求められる言語能力の問題等も加味して慎重に決定される必要があり,安易に職種を増やすべきではない。
 

第3 技能実習制度の「適正化」の問題点

1 二国間協定の締結を明記すべきである
 送出し機関による保証金等不当な金銭の徴収や管理,労働契約不履行に係る違約金を定めるような不当な契約を締結すること等による、技能実習生に対する人権侵害が多発しており、送出し機関への規制を実効化する必要がある。
 しかしながら、送出機関規制について、分科会報告や有識者懇談会報告では、「二国間協定」「政府(当局)間取決め」を締結すべき旨提言されたにも関わらず、技能実習適正実施法案では、そもそも規定すらない。
 本法案で「二国間協定」の締結を明確に規定すべきであり、「二国間協定」の締結まで効力が発生しない旨明記すべきである。
 
2 監理団体の必要経費を明確化すべきである
 本法案28条(監理費)は、2項で「監理団体は、前項の規定にかかわらず、監理事業に通常必要となる経費等を勘案して主務省令で定める適正な種類及び額の監理費を団体監理型実習実施者等へあらかじめ用途及び金額を明示した上で徴収することができる。」と規定する。
 しかし、現行制度下においては、監理団体が徴収する監理費は、管理事業に通常必要となる経費とは無関係に、技能実習生1名あたり2~3万円という一律の金額で徴収されているケースが多く、受入れる技能実習生の多い監理団体の役員の高額な報酬や接待費等の原資となっているという実態がある。そして、実習実施機関が、監理費の負担を技能実習生の賃金に転嫁する結果、5項で述べる通り、技能実習生の賃金は最低賃金レベルとなっており、実質的には、労働基準法の禁じる中間搾取の弊害が発生している。
 そこで、主務省令において、「通常必要となる経費」に監理団体役員の不当に高い報酬や接待費等を含まないよう明示すべきである。
 
3 外国人技能実習機構の相談・援助等の業務を専門家等に委託すべきである
 本法案では、外国人技能実習機構を認可法人として新設し、技能実習生に対する相談や情報提供、援助、技能実習生の保護等を行うとされている(法案57条、87条2号等)。
 相談・援助制度の整備自体は必要な措置と考えるが、技能実習生の保護、救済及び相談対応のためには、機構の対応のみでは不十分であり、法テラスや弁護士会等の法律の専門家や、外国人の相談業務に精通したNGO等に相談等の業務の一部を委託すべきである。
 なお、従前、JITCOが行なっていた巡回指導については、2013年の総務省の行政評価においても、「実習実施機関の不正行為等を指摘することができていない」と評価され、相談業務も不正行為の防止に寄与していたとは言い難かったことから、機構は組織や人的公正において、実態としてJITCOから明確に切り離して成立させるべきである。
 
4 実習実施機関の変更・選択を認めるべきである
 技能実習生は、労働者でありながら職場移転の自由がなく、そのため対等な労使関係の構築が困難で深刻な人権侵害が続出するという点に、技能実習制度の構造的な問題点がある。
 したがって、技能実習期間を通じて、技能実習生に帰責性が無い場合にも広く実習先の変更を認めることのほか、仮に技能実習3号を創設する場合には、少なくとも3号移行時の実習先の選択を認めることを明記すべきである。
 
5 日本人と同程度の賃金水準の確保を明記すべきである
 本法案では、技能実習生の待遇について、「技能実習生の待遇が主務省令で定める基準に適合していること」し(法案9条9号)、省令に委任している。
 もっとも、現行でも、法務省令(上陸基準省令)において「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上」とされているが、現状、技能実習生の賃金は最低賃金レベルであり、高卒初任給を大幅に下回っており、法務省令は実効性を伴っていない。
 したがって、本法案においても、技能実習生の報酬について、日本人と同額以上の水準を確保すべき旨明記すべきであり、例えば、建設業においは、「公共工事設計労務単価」など客観的かつ具体的な指標を用いるなどの規定を設けて、技能実習生の待遇の向上を図り、実質的な低賃金労働者との批判を解消すべきである。
 
6 罰則規定の実効性を担保すべきである。
(1)違約金等の禁止
 本法案は、実習監理者等は技能実習生やその親族等と違約金や損害賠償額を予定する契約を禁止し(法案47条1項)、罰則を設けている(法案101条4号)。
 しかし、技能実習生の違約金契約は、たとえば、マスコミや行政への通告、さらには妊娠などの私生活上の行為も広く対象とされることがある。
 そこで、本法案では違約の対象は、「技能実習の契約の不履行」とされているが、私生活上の行為を違約の対象とするべきである。
 また、技能実習生との間の違約金契約は送り出し機関やブローカーとの間で締結される事例が多いことから、法の適用対象を実習監理者等に限定すべきでない。
 
(2)強制貯蓄の禁止
 実習監理者等の技能実習契約に付随した貯蓄又は貯蓄金管理の契約を禁止し(法案47条2項)、罰則を設けている(法案101条4号)。
 しかしながら、技能実習生との間の違約金契約は送り出し機関やブローカーとの間で締結される事例もあることから、法の適用対象を実習監理者等に限定すべきでない。
 
(3)旅券等の取り上げ
 本法案では、実習実施機関及び監理団体(以下「技能実習関係者」という)の役員・職員におる旅券や在留カードの保管を禁止し(法案48条1項)、技能実習生の意に反して旅券等を保管した場合の罰則を設けている(法案101条5号)。
 しかしながら、旅券等の保管は実習実施関係者だけでなく、送り出し機関職員やブローカーによってなされる事例もあることから、法の適用対象を技能実習関係者に限定すべきではない。
 また、本法案では技能実習生の意に反しない保管には罰則が科されないことになるが、技能実習生がその意思によって旅券を預けることは想定し難く、また、技能実習関係者と技能実習生との支配従属関係から技能実習生が技能実習関係者の保管の申し出があればそれを拒否できない場合が多いことから、一律罰則の対象とすべきである。
 
(4)私生活の自由の制限
 本法案では、技能実習関係者は、技能実習生の外出その他私生活の自由を不当な制限の禁止規定を置き(法案48条2項)、同規定に違反して、技能実習生に解雇その他の労働契約上の不利益又は制裁金の徴収その他財産上の不利益を示して、通信や面談、外出の全部又は一部の禁止を告知した場合の罰則を規定している(法案101条7号)。
 しかしながら、技能実習生の私生活の自由は、技能実習関係者だけでなく、送り出し機関職員やブローカーによって制限される事例が多いことから、法の適用対象を技能実習関係者に限定すべきではない。
以 上


外国人研修・技能実習制度の法改正に対する意見書


 平成21年2月8日,研弁連は臨時総会を開き,下記の内容の意見書を採択しました。

内閣総理大臣 麻生 太郎 殿
法務大臣   森  英介 殿
外務大臣   中曽根弘文 殿
厚生労働大臣 舛添 要一 殿
経済産業大臣 二階 俊博 殿
国土交通大臣 金子 一義 殿

  外国人研修生問題弁護士連絡会
  共同代表 弁護士 小野寺信勝
  共同代表 弁護士 指宿 昭一
  事務局長 弁護士 大坂 恭子

第1 意見の趣旨

 当会は、外国人研修生制度、技能実習生制度について、以下の抜本的見直しを要求する。

1.技能実習生の実務研修に関し、労働関係諸法令の適用を法律により明示すること。
2.現行の団体監理型の受入れを禁止すること。
3.技能実習生に対し多額の保証金や管理費の徴収、賠償金の取り立てを行う本国送り出し機関からの受入れを禁止すること、これに伴い、いかなる契約を行う送り出し機関からの受入れを禁止するかを法律で明示すること。
4.技能実習生及び技能実習生に対し、指定された範囲内での職種の変更を認めるとともに、受入れ機関の都合により現在の受入れ機関での研修、技能実習が継続できない場合でも3年間の研修、技能実習を受ける機会を保障すること。

第2 声明の理由

1 外国人技能実習生・技能実習生制度の沿革  日本における外国人技能実習生受け入れは1950年代後半に始まり、1989年の入管法の改正により在留資格に「研修」が設けられた後、1990年に技能実習生制度を改正、いわゆる「団体監理型」(中小企業団体等を通じて中小企業等が技能実習生受入れを行う形態)を導入し、受け入れの条件の緩和が行われた。
 また、1993年には、研修を終了し所定の要件を充足した技能実習生が技能実習生として雇用関係のもとで引き続き本邦に在留できることとなり、1997年には技能実習中の滞在期間が2年に延長(研修での滞在期間と合わせて最長3年)され、現在の制度となった。
 2007年における在留資格「研修」の新規入国者数は約10万2000人、技能実習への移行者は約5万4000人、技能実習中の者は10万人近くにも上り、合計20万人が国内で働くに至るなど、技能実習生・技能実習生の数は年々増加してきた(註1)。
2 研修・技能実習制度の趣旨
 外国人技能実習生制度は、「開発途上にある国々に対して技術・技能を移転させることを目的として、我が国に技能実習生を招いて技術移転による人材育成を行い、それらの国々の発展を支援するという長く広くその効果が浸透していく国際協力・国際貢献」(法務省入国管理局)であるとして制度化され、かかる制度趣旨から、研修内容は、単純な反復作業の研修でないこと、受入れ機関は、研修時間の3分の1以上の時間を日本語研修などの「非実務研修」(いわゆる座学研修)に当てることを原則とされた。
 技能実習制度も、研修制度の拡充の観点から研修を終了し所定の要件を充足した技能実習生に、雇用関係の下でより実践的な技術・技能等を修得させ、その技能等の諸外国への移転を図り、それぞれの国の経済発展を担う「人づくり」に一層協力することを目的として創設された。
 「研修」は出入国及び難民認定法(以下、「入管法」という。)で「本邦の公私の機関に受け入れられて行う技術・技能又は知識の習得をする活動」と定められている。技能実習生は、「技術を学ぶ者」とされるため、研修中は報酬を受ける活動が禁止されており、受領する給付は研修手当(生活実費)であるとされる。残業や休日労働はさせられないかわり、非労働者として労働関係諸法令の適用を受けないとされてきた。 研修・技能実習制度は、法令の他に多くの告示、通達等により規定され運用されているが、これらの諸規定は、技能実習生や技能実習生が入国・在留するための基準として定められているものであり、技能実習生受入れ機関の留意事項や不正行為については、法務省入国管理局による「技能実習生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針」を除くと直接の定めがなく、技能実習生保護のための立法はなされていない。また、受入れ機関に対する責任ある監督機関も定められていない。
 そのため、現実には、以下に述べるとおり、制度趣旨とあまりにも乖離した実態が存在する。

3 現状の問題点

(1) 技能実習生の労働実態
 技能実習生の多くが研修の実態はないまま「実務研修」と称して、長時間の労働をさせられている。以下、当連絡会所属の弁護士の携わった具体的事例を述べる。
■事例①:残業(熊本)
 2006年4月から6月に技能実習生として来日し、熊本県小国町にある第1次受入れ機関である事業協同組合を通じて、天草市の縫製会社に配属された中国人技能実習生・実習生らが、違法な労働条件のもとで就労させられていた事件。労働条件は1日12時間以上、休日も月1、2回程度しか与えられていなかった。また、給与は約月6万円、残業代は県の最低賃金の半分以下の時給300円しか支払われていなかった。さらに、旅券、通帳、印鑑を取り上げられ、賃金は強制的に貯金させられていた。
■事例②:残業(岐阜)
 2005年3月から7月に技能実習生として来日し、岐阜県揖斐郡大野町にある第1次受入れ機関である事業協同組合を通じて、岐阜市の縫製会社に配属された中国人技能実習生・実習生ら(女性4名)が、違法な労働条件のもとで就労させられていた事件。技能実習生であるにもかかわらず、時間外労働が強いられるどころかその残業時間は月200時間近いこともあった。にもかかわらず、技能実習生らは、残業代として県の最低賃金の半分以下の時給300円しか支払われていなかった。しかも、技能実習生らの研修手当は、月8万4000円で、協同組合がその中から管理費として3万9000円を控除するため、技能実習生が受け取れる研修手当は、結局、4万5000円であった。
 技能実習生に支払われる研修手当の平均額が2005年で月額6.6万円、月8万円未満が84.4%という実態(註2)に見られるとおり、仮に賃金とすれば最低賃金に達しない水準の給付しか得られないにもかかわらず、現実には、技能実習生は、技能実習生や他の日本人労働者と区別されることなく、時間外や休日労働をさせられている。技能実習生に時間外労働をさせた例は、平成19年度に入国管理局より「不正行為」と認定を受けた例だけでも98件(註3)にものぼる。法務省入国管理局の指針(註4)においても、技能実習生に月100時間を超える所定時間外(註5)労働を行わせていた企業や月130時間を超える残業をさせていた企業が不正行為と認定されている。
 このように、外国人技能実習生は、実態としては、単なる低賃金労働者として使われているにも拘わらず、労働関係諸法令の保護が全く与えられていないばかりか、明確な指導、監督機関もないまま放置されている現状がある。
(2)技能実習生に対する労働関係諸法令違反の横行  また、本来、雇用契約の下に最低賃金法に従った賃金額、時間外手当が支払われるべき技能実習生についても、実際には、最低賃金法に従った賃金の支給がなされていない場合や、不当なピンハネがなされているケースが少なくない。
 例えば、先の岐阜の残業事例においては、技能実習生の賃金から、協同組合が管理費として4万2000円(2、3年目)を控除するため、技能実習生が受け取る賃金は、月4万8000円(2年目)、5万2000円(3年目)で、しかも、ここから月3万円が強制的に貯金させられ、この貯金は協同組合の管理下にあったため、実質的には技能実習生時代と変わらない待遇を受けていたのでる。しかも、残業代は、技能実習生に移行した後も最低賃金の半分以下の時給300円(2年目)、350円(3年目)しか支払われていなかった。 そして、2007年9月、彼女たちは、3年目の技能実習中に、突然、2日後に、中国へ帰国するように命じられた。既に帰国した技能実習生に対して、第2次受入れ機関が、違法に低額の残業代を支払っていたことが発覚し、名古屋入管から「不正行為」であると認定され、技能実習生・実習生の受け入れ機関としての適格性を失ったので、技能実習生全員を帰国させようとしたのである。
(3)人権侵害行為の多発
 受入れ機関における人権侵害行為も横行している。
■事例①:(愛知県豊田市)
 愛知県において、ベトナム人技能実習生6名が、未払賃金、残業代、人権侵害に基づく慰謝料を請求した事件。人権侵害の内容は、強制貯金、旅券や健康保険証の強制管理、トイレに行く度に徴収された罰金の制度、女性技能実習生の住居に夜中に受入れ機関の社長が潜り込む等のセクハラ行為、差別発言等悪質で深刻なものであった。
 また、受入れ機関による旅券の強制管理は、団体管理型で技能実習生を受け入れた多くの受入れ機関で行われており、その多くが技能実習生来日直後に預り証に署名を求めた上、帰国する時期まで管理するという内容である。
■事例②:(岐阜)
 住環境が劣悪である事例も多数報告されているが、岐阜において、金属加工の作業に従事していた中国人技能実習生の事例では、技能研修生制度、技能実習生制度らは、本来住居スペースとして想定されていない工場の中二階で、ベニア板で仕切っただけの小屋を造って生活をしていた。一階での金属加工作業による粉塵が舞い衛生状態が悪く、耐震性も全く整っていなかった。技能実習生に対しては、受入れ側が住居を提供することとなっているが、実際のところ住居を提供しているとは到底言えない例がある。
 法務省入国管理局により認定された受け入れ機関による「不正行為」を引用するだけでも、「人権侵害行為」は、70件にもおよび、法務省入国管理局が「看過できない状況」と指摘する事態が生じている。 技能実習生の旅券や預金通帳を取り上げ、携帯電話の所持を禁止し、夜9時以降の外出を禁止したり、遠出の外出を禁止するほか、部屋の施錠を忘れた場合や内履きで屋外に出た場合の罰金を定めた受入れ機関の存在など、入国管理局によって多数指摘されている。
 また、不十分なJITCOの平成19年度における巡回指導によっても、不適正なパスポートの管理が指導された企業は25存在する。また、JITCOには平成19年度に31件もの受け入れ機関による暴力やセクハラの相談も寄せられている(註6)。これらの現状を受け、昨年3月25日の閣議決定は、早急に講ずべき措置の一つとして、受入れ機関の適正化を図るため、「不正事案については入国管理局及び労働基準監督機関の間との綿密な連携の下に・・・積極的に実態調査または臨検監督を実施」することとした。
 政府は、かかる閣議決定に従い、早急に実施を具体化すべきである。

(4)在留資格の不安定性
 入国管理局では、研修・技能実習に関し不適正な行為を行った機関に対しては、「不正行為」の認定を行い、技能実習生の受入れを3年間停止する措置を講じているが、その際、不正行為認定を受けた機関で既に受け入れられており、在留期限が残っている技能実習生たちを保護する運用は何ら行われていない。すなわち、受入れ機関に不正行為認定がなされると、当該受入れ機関で研修中の在留期間内の技能実習生たちは、在留期間の更新が困難となるばかりでなく、在留継続の基盤を失う結果となり、言い換えれば、不正行為認定により技能研修生制度、技能実習生制度が不利益を被る結果となっている。
 これにより、技能研修生制度、技能実習生制度たちは、不正行為の通報ができなくなり、過酷な労働や人権侵害行為にも甘んじることになるのであり、受入れ機関の不正行為を抑制することができない。 2007年12月の規制改革会議第2次答申においても「受け入れ機関の不正行為に遭遇しながらも技能実習生・技能実習生はみずからが途中帰国させられることをおそれ、被害の実情を入国管理局・労働基準監督機関等に申告することを躊躇する傾向にあるため不正行為が減少しないとも指摘されている」と同様の指摘がなされている。
 この点に関しては、2008年3月25日の閣議決定においては、2008年措置として「受入れ機関が不正行為の認定を受けた場合及び受入れ機関の倒産等により研修・技能実習が継続できない場合」には「他の機関に受け入れられる場合には引き続き在留が認められる」ことを明確にし、「他の受入れ機関において研修・技能実習を継続できるよう受け入れ先機関の開拓を行う仕組みを構築」する旨の決定がなされているが、未だに具体化はしておらず、受入れ機関や技能実習生任せになっている。
 また、受入れ機関が気に入らない技能研修生制度、技能実習生制度について、予め管理している旅券を利用して航空券を手配し、強制的に帰国させるという事例も多数報告されている。
■事例:強制帰国(岐阜)
 岐阜県の金属加工工場において会社の指導が不十分であったためにボール盤の操作を誤り、手指を切断する怪我を負った技能実習生が、事故から約1か月後、協同組合と受入れ企業により強制的に空港へ連れて行かれ、予め技能実習生の貯金によって用意されていた航空券を渡され、上海まで見張り役2名をつけられて強制的に帰国させられた事例。この技能実習生は、空港へ連れて行かれる際、殴る蹴るの暴行を受け、また、持ち物検査を受けて、衣類以外はほとんど没収された状態で帰国を強いられた。
 このような事態は、根本的には、外国人研修生制度、技能実習生制度を入管法のみに依拠させ、技能研修生制度、技能実習生制度の在留資格を受入れ機関の存在に依存させているために生じるものである。
(5)送り出し機関の問題
 外国人技能実習生が、来日に先立ち、本国の送り出し機関との間で締結している契約内容についても多くの問題が存在する。送り出し機関とは、日本の第一次受入れ機関と契約を結び、技能実習生の送り出しを行う機関である。 技能実習生たちはそれぞれの母国の送り出し機関の人材募集に応じて集められ、この機関と契約を結び、多額の準備費用を負担させられ、送り出し機関との契約に違反した場合の違約金を担保する保証金、土地、家などの担保を取られることが多い。技能実習生たちは、この契約に基づく保証金の没収及び違約金の徴収を恐れ、日本において受入れ機関から人権侵害を受け、労働条件が法令違反であることがわかったとしても、権利主張をすることが極めて困難な状況に追い込まれている。
 送り出し機関との契約内容としては、日本の労働関係諸法令に違反する定めが置かれていることが通常である。さらに、受入れ機関の行ったことに関し、「日本の裁判所、社会団体、報道機関に訴えない」、「ストライキをしない」等といった条項を入れて権利行使を妨げ、これに違反した場合にも上記の違約金等を没収するという条項が入る場合がある。
■事例①:ベトナムの送り出し機関スレコ
 多くのベトナム人技能実習生を日本に送り出しているベトナムの国営企業スレコ(SULECO)においては、技能実習生を送り出すに際して契約を締結する際、すでに日本において受入れ機関から支払われるべき研修手当、賃金について、本法の労基法上許されない低賃金、時間外手当、強制貯金の定めを定型の書式において置いている。技能実習生に対して送り出すに先立ち約100万円の保証金を徴収し、家族の居住する不動産には抵当をつけ、来日後に受入れ機関をして毎月徴収した強制貯金は送り出し機関へ送金をさせ、仮に、技能実習生が送り出し機関の指示に従う内容で帰国できなかった場合には、保証金、強制貯金は全て没収するという内容の契約をしていることしている。
■事例②:上海送り出し機関
 2005年から岐阜市の縫製業の会社で研修・技能実習を行った中国人研修・技能実習生(女性名)の場合、送り出し機関と締結した「技能実習生待遇確認書」に、日本の最低賃金法に違反する、技能実習の日給を4800円(2年目)、5200円(3年目)、研修・技能実習の残業代時給を300円(1、2年目)、350円(3年目)とする規定があり、また、「承諾協議書」には、研修・技能実習生は「日本の裁判所、社会団体、報道機関に訴えない。」という規定があった。彼女たちは、技能実習の途中で、労働組合に加入して、最低賃金を下回る残業代の支払いを協同組合及び会社に要求して、その一部を支払わせ、2007年3月に帰国した。
 2007年4月16日、中国上海の送り出し機関が上海市崇明県人民法院へ、4名の元技能実習生及びその保証人に対して4つの損害賠償請求訴訟(各5万2000元)を提起した。同月25日、元技能実習生等、保証金返還請求(各2万元)は反訴を提起したが、同年10月12日、元技能実習生・1名およびその保証人の一審敗訴判決が出された。敗訴の根拠は、第1次受入れ機関名義の損害賠償請求書が証拠として提出されたことである(実は、これは偽造文書である)。同年10月頃、敗訴した元技能実習生および保証人は、上海市第二中級人民法院へ控訴。同年12月17日、控訴棄却判決が出され、確定した(中国の裁判は、二審制)。同年12月20日、他の3名の元技能実習生及びその保証人の一審敗訴判決が出されている。2008年9月、送り出し機関は、上記確定判決に基づき強制執行をかけてきた。元技能実習生らは、同年11月に再審を申し立て、現在、係争中。
4 抜本的法改正ないし立法の必要性
 上記の問題点を改善するためには、第一に、緊急の施策として、技能実習生の実務研修について、労働関係諸法令の適用を定めることが必要である(意見書趣旨1)。
 しかしながら、かかる改正が制度の抜本的見直しに繋がる訳ではない。外国人技能実習生制度は、前述したとおり、「開発途上にある国々に対して技術・技能を移転させることを目的として、我が国に技能実習生を招いて技術移転による人材育成を行い、それらの国々の発展を支援するという長く広くその効果が浸透していく国際協力・国際貢献」(法務省入国管理局)とされながら、実態としては、上記の通り、技能実習生が「研修」とは認めがたい「労働」に従事させられており、制度趣旨との乖離が甚だしいからである。
 すなわち、日本政府は、表向きには外国人に対して単純労働のための在留資格を認めていないにも拘わらず、多くの技能実習生・実習生は「きわめて安価な労働力」として、また転職のできない「管理された労働力」として働かされ、過酷な就労・生活環境の下で人権侵害が頻発し、「現代の奴隷」と批判される事態が生じており、なかには、悪質なブローカーや受入れ機関に管理費等のピンハネを受け、実質的に人身売買と指摘せざるを得ない事例すら存在するのである。
 そのことは、近時、国際的にも認知されるに至っており、2008年10月、国連自由権規約委員会は、外国人技能実習生問題に関して、日本国政府に対し、「法定最低賃金や社会保障をはじめとする最低労働基準に関する国内法による保護を外国人技能実習生および技能実習生に適用し、技能実習生と技能実習生を搾取した雇用主に対して適性な制裁措置を科すべきである。また締約国(日本国)は、現行の制度を、技能実習生及び技能実習生の権利が十分に保護される新たな枠組みに発展させ、低賃金労働者としての募集よりも、能力開発に焦点をあてることを検討すべきである」との勧告をなした。
 外国人技能研修生制度、技能実習生制度制度を維持するとしても、以下の点を見直すべきであり、かかる見直しを定めない小手先の法改正では、不十分と言わざるを得ない。以下、意見書の趣旨2ないし4について補足する。

(1)意見書趣旨2について
 2003年から2007年の5年間に「不正行為」と認定された1160件のうち1128件は団体監理型である。
 技能実習生・技能実習生の受入れには、企業単独型と団体監理型がある。企業単独型は、日本の企業が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を直接受け入れるものである。これに対して、団体監理型は、事業協同組合等の中小企業団体、商工会議所、商工会等が受入れ団体(第一次受入れ機関)となって技能実習生・実習生を受入れ、傘下の中小企業(=受入れ企業、第二次受入れ機関)において実務研修及び技能実習を実施するものである。  団体監理型では、従業員十名から数十名程度の中小企業も技能実習生・技能実習生の受入れが可能となるため、十分な受入れ体制の整わない受入れ機関も少なくない。  経済産業省も「こうした不正行為を行っている受け入れ企業では、研修・技能実習生に対する十分な技能教育や生活支援なども行われていないケースが多いと言われておりまさに制度趣旨に反する受け入れ実態となっている」(註7)と指摘しているところである。本来の制度趣旨に沿った制度運営を目指すのであれば、第一に、団体監理型を廃止すべきである。

(2)意見書趣旨3について
 上記に述べたとおり、技能実習生は、来日に先立ち、本国送り出し機関との間で、多額の保証金を納め、その没収、研修中の管理費の徴収、違反行為があった場合の賠償金の予約など、本邦においては、法令違反となる内容の契約を締結していることが大半である。日本政府は、本邦における外国人技能研修生制度、技能実習生制度制度がかかる弊害を本国で生み出していることを真摯に受け止め、実態調査に乗り出すと共に、このような日本の法令違反の契約を行う送り出し機関からの技能実習生受け入れを、法令で明確に禁止しなければならない。

(3)意見書趣旨4について
 技能実習制度は、労働でありながら、他業種への転職を認められていないという特殊性があり、その結果、技能実習生の在留継続を受入れ機関に依存させることとなり、受入れ機関に対する正当な権利主張を妨げ、受け入れ機関や送り出し機関による人権侵害を誘発している。
 そこで、技能研修生制度、技能実習生制度が在留期間中に研修、技能実習を受ける機会を保障し、その期間内は、他の労働者同様、他企業、指定された範囲内での職種への移転を認める必要がある。
以上

補足情報
註1: 厚生労働省 2008年6月 研修・技能実習制度研究会報告(以下研究会報告という)2頁
註2: 2006年8月 JITCO業務統計
註3: 研究会報告5頁
註4: 入国管理局 2007年12月技能実習生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針
註6: JITCO 2005年受け入れ実態調査
註7: 経済産業省 平成19年5月14日 「外国人研修・技能実習制度に関する研究会」取りまとめ